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こんちき―あくじゃれ瓢六捕物帖


「妬きゃあしやせんがね、あいつらには奥ゆかしさってもんが、これっぽっちもありゃしねえ」


 瓢六シリーズの二作目。今回から瓢六は無事牢から出てそれなりに平和な生活を送っております。相変わらずお袖といちゃついているので、周りの人々も諦めかけている様子。前巻での「牢の中に居ながら事件を解決する小悪党」の設定が面白かったので普通の捕り物話になってしまうのは残念だなあとも思いましたが、瓢六は町にあっても頼られる良い兄貴分のようです。さるお方に頼まれて瓦版屋をやってみたり、お武家様の母子を訳も分からず面倒見たり、お袖の無茶ぶりに気を揉んだり、菅野様に毎回振り回されたり、瓢六と弥左衛門が毎日忙しそうにしている傍らで脇を固めるこれまた曲者たちが問題を起こしたり逆に解決したり。弥左衛門とお八重様との恋も多少なりとも進展したご様子です。前巻に比べると暗いところが少ない分、よりサクッと読める時代小説の体を取ってきました。
 男女問わず好かれる色男の瓢六ですが、欲を言えばもう少し「目利き」設定と「小悪党」っぷりを生かしてほしかったなあと思います。江戸の下町の弱者を守るヒーロー的な役割になってきているのが残念。一巻の頃のお上に楯突くあの気概は何処へ。まあお上の前に瓢六をアゴで使う謎多き菅野様が居るんじゃあ、それも仕方無いような気がしますが。それに反してお袖さんは同じ女性としてとても好感の持てる書き方をしてあります。瓢六を心の底から愛して勿論彼を養うだけのお金も自分で稼ぐ、町中に顔がきいて困った人を放っておけないお人好し。でも決して馬鹿じゃない。そりゃあ瓢六も惚れるよ、というくらいの良い女っぷりです。それでも周りの人にしては恐ろしく気の強い扱い辛い女との認識らしいので、つまり瓢六とお袖はお互いもし他の人だったら上手く成り立たないようなぴったりのカップルなんでしょうね。

 この瓢六シリーズ、現時点であともう一巻出ているようです。弥左衛門とお八重様の恋が上手く行くことを祈りながら、次巻を楽しみに読もうと思います。


(2009.8.31)
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あくじゃれ―瓢六捕物帖


「物の値打ちは、見た目じゃあ決まらねぇ」


 歴史物で推理物、とは言いつつ軽い小説です。殺人あり陰謀あり人情あり、の簡単に言えば『水戸黄門』のようなノリで展開される捕物話で、シリアスになりすぎないのでさらっと読めます。
 主人公瓢六は阿蘭陀語が達者で唐絵目利きを務めていたこともある人物。とある事情により今は罪人として牢暮らし。牢に繋がれた罪人であり探偵である、という設定が一種漫画的で面白い。現実味が無いと言われればそれまでですが、「江戸」という時代にこだわりすぎず楽しむ気持ちで読むと案外面白いです。とにかく口上手で手も早い、頭も切れて何より色男の瓢六が牢の中でも飄々としている様子や、ふらりと色々な場所に立ち寄りながら街を闊歩する様子が江戸の町並みとともにイメージできるような文表現です。時代物にしては分かりやすい文体だと思うので、今までなかなか手を出せなかったという人にもこれはオススメ。ハンサム瓢六とカタブツ弥左衛門のデコボココンビぶりが笑えます。
 ただ、弥左衛門と瓢六のお互い信頼するようになる過程をもっとじっくり書いてほしかったかな、と思います。犬猿の仲から発展するのが早すぎると言うか、一冊丸々使って書いてくれても良かったんじゃないかと、少し残念に思ったりもします。また、主人公は牢に繋がれているとは言え特赦により期限付きで自由に歩き回れる身。あまり「牢」という設定が生かされなかったのが残念。ともあれ、続編に期待します。


(2009.7.23)
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仏果を得ず


「もし文楽の神様がいるのなら。俺を長生きさせてくれ。もらった時間のすべてを、義太夫に捧げると誓うから。」


 毎回思うことですが、三浦さんの文章はとにかく読みやすい。これといったクセがあるわけでも独特の言い回しをするわけでもなく、ただシンプルな文字が並んでいるだけなのに、それがかえって分かりやすく、面白い。ストーリーの終盤になると場面も文章も気分も最大級に盛り上がってくる、ある意味典型的な小説なのですが、細かいところで本当に読者を飽きさせない人だなあと思います。
 今回のテーマは「文楽」。つまり浄瑠璃です。厳しい芸の道なのでそれなりに複雑な決まりや様式があり、またその中に信頼関係や確執があり、ある種閉鎖的な世界の中で、30代の主人公、健が義太夫の真髄を求めて苦悶する話です。こう書くと難しく見えますが、三浦さんの軽い文体のおかげで気負うことなく読むことができます。馴染みのない文楽作品についても、粗筋を語りつつ本編に然り気無く絡ませてくれるので分かりやすい(逆に言うと、普段からじっくり読む人は問題ないですが、私のようにまずさらっと読む、という人は各作品の粗筋部分だけはしっかり読んでおいた方が良いです。何度もページを戻るはめになります)。 また、毎度のことながら登場人物の掛け合いがとにかく面白い。一人一人が強烈な個性を持っているので、そのぶつかり合いが楽しくて思わず読みながらにやにや笑ってしまったりします。適当な師匠の銀大夫に、気難しい三味線の兎一郎、熱心な生徒のミラちゃんとその母真智、ラブホ経営者で友人の誠二、そんな人たちとの触れ合いを通じて、健の成長を描く青春小説です。文楽入門書としてもお勧め出来る一冊です。

(蛇足)
 高校のときに模試で出て興味を持って手に取った、という経緯がありまして、こういう面白い素材を選んでくれたらいつも楽しんで問題を解けるのになあとも思ったりします。


(2009.7.15)
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四畳半神話体系


「我々は運命の黒い糸で結ばれてるというわけです」


 そろそろ森見節にも慣れてきたかなという三冊目。またもや京都を舞台に、四畳半を中心とした奇妙なパラレルワールドが展開されます。登場人物は一章に余すところなく押し込められているので、それさえ忘れなければスムーズに読めます。
 個人的な話で申し訳ないのですが、どうも森見登美彦の文章は(読んでいる私が)エンジンがかかるまでに十分すぎるタメがあるらしい。最初は漢字の多さに辟易しつつ、のたのたと読んでしまうので今一つノリきらないのです。それでも二章に入るあたりからものすごく面白くなってくる。毎回一章を後から読み返すハメになるのが残念ですが、後半の面白さったらないです。あの小津くんですら愛おしく思えてきたりします。城ヶ崎先輩も読了後では全く印象が違って魅力的。大体の登場人物全てにスポットが当てられるので、前章との違いを探しながら読み進めていくのが楽しい。間違い探しの感覚です。

 最終章はなんとなーくシンパシイを感じちゃったりするはず。お勧めです。


(2009.7.7)
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あなた


「あなたを見つめるために生まれてきた。」 


 二浪してもう後のない主人公、秀明。にも関わらず女の子に目が行くばかり。そんな日々でもそれなりに楽しくやっていたはずが、正月になって思いもよらぬことが彼の身に降りかかる。友人の恋のキューピッドをしたり新たな出会いがあったり、その後も普通の大学生活を送っているのに何かおかしい。一連の事件が解決するまでの流れが、神の視点と「彼女」の視点から綴られます。
 読んだ直後の感想としては「これ……出すレーベル間違えてるんじゃ?」でした。個人的にはこれは角川ホラー文庫で出すべきだったと思うのです。ジャンルとしては恋愛小説らしいのですが、どうも恋愛要素が前面に出されているわけでもない。
 分かってしまえば、なーんだ、というシンプルなストーリーにも関わらず、とにかく長いです。展開としてはどこにも無駄がなかったようには思うのですが、どうしても長い。というかしつこい? 文庫版は上下二冊に分かれているぐらいです。真相と話の筋は予想がついていたので途中まではなんとなく読めたのですが、ラストは少し予想外でした。残念ながら私はあのラストがあまり好きではありません。あと主人公の遊び人っぷりがどうしても好きになれず、誰にも感情移入できずに終わってしまったような気がします。母に言わせると、そんないけ好かない男が苦しむから面白いらしいのですが、やっぱりちょっと残念な作品でした。


(2009.7.5)
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有頂天家族


「そりゃ、おまえ、阿呆の血のしからしむるところさ」


 森見登美彦の本ということで手にとったんですが、これがまた面白かった。個人的には『夜は短し歩けよ乙女』より好きな作品です。
 一言で言うと、現代日本ファンタジー。狸と天狗と人間と、三者三様三つ巴の戦い(?)が京都を舞台に展開されます。偉大な父の血を受け継ぎながらもどうもパッとしない狸の下鴨四兄弟、彼らの師である天狗の赤玉先生、その弟子であり秘蔵っ子の弁天、下鴨の天敵夷川、妙な人間たちが集まる金曜倶楽部、様々な種族と事情が絡み合って終盤の疾走感が壮快です。序盤は冗長な感じが否めませんが、人物関係が分かってくると森見さん特有の語り口に引き込まれます。スタジオジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』を彷彿とさせながらも、より酔狂な舞台設定。
 この人のすごいところは奇抜な言葉遣いながらも状況が分かりやすく描写されているところだと思います。舞台が京都なので万城目学と比べられがちですが、両者それぞれ面白いです。第二部も開始したらしいので続編を楽しみに待とうと思います。


(2009.7.2)
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白昼堂々


「遠のいていく足音に耳をそばだてて、凜一は追いかけたい衝動を苦心して抑えた。」


 俗に言う凛一シリーズの一作目です。線の細い十四歳の少年、凜一が主人公。体調が優れなかったために進学試験の追試を受けることができず、そのために行なったある取引が原因で後々ややこしいことに。言わばノンケとの恋愛なわけで、すんなり行かないことばかりです。それがまた焦れったい。
 小さい頃は凜一のような身体の弱い子に憧れを抱いていたものですが、凜一はただ弱いだけではなく「泣かない」子なので好感が持てる強い主人公ですね。ただ少しひねくれた考えの持ち主なので、人によっては卑屈な感じに受け止められるかもしれません。登場人物がかなりアクの強い人たちばかりなので、そういったことに抵抗がない人にはお勧め。とにかく、相手に迷惑をかけまいとする凜一の姿がいじらしく切ないです。

 すでに完結しているので、続編も楽しみです。


(2009.6.28)
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とっても不幸な幸運


「幸運も不幸も、缶の中にある」


 世間では評価が低いようですが、個人的には非常に楽しんで読めました。畠中さんの本が初めてだということもあって何の先入観も無しに読めたというのが大きいんじゃないかと思います。どうしても『しゃばけ』シリーズと比べられてしまうようですね。恥ずかしながらそちらは未読なのです。
 新宿にある「酒場」というバーで起こる、「とっても不幸な幸運」の缶をめぐる連作です。主な登場人物はバーの店長とそこの常連客たち。彼らが缶を開けることで過去の自分と向き合ったり悩んだりする話です。少々ファンタジー要素も織り交ぜつつ展開していくので、普通の現代モノを期待している人はびっくりするかもしれません。私はかなり好きです。笑い要素もあり、ちょっとほろりとくる要素もあり。『健也は友の名を知る』が一番面白かったです。 ちょっと不思議な話が好きな人にお勧め。文庫版も出てます。


(2009.6.25)
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よろづ春夏冬中


「何ひとつ真実にたどりつかないもどかしさを抱え、素直になれない。」


 あやかしもの中心の短編集です。『あめふらし』に出てきた市村兄弟と橘河の話がある(もっとも、刊行されたのはこちらが先です)とのことで読みました。出版順では『よろづ春夏冬中』→『あめふらし』ですね。
 男同士の恋愛模様が妖的な要素と絡ませつつ書いてあるのは『あめふらし』と大差ないんですが、描かれ方がより奥ゆかしいです。あまり直接的でなく、秘めやかな感じ。それでも「男同士」ということは顕著なので、苦手な方はご注意(『タビノソラ』『待ちきれない』等)。中には『希いはひとつ』などのただの妖モノもあって、個人的にはこの話と『アパートの鍵』『海辺の休日』が好きです。
 長野さんの手による装画が素敵なのでそれだけでも見る価値があります。私のように後期の長野作品から遡って読んでいるような人には受け入れやすいのではないでしょうか。


(2009.6.24)
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耳猫風神社


 相変わらず男の子しか出てこないのにはもう慣れましたが、私が今までで読んできた長野さん作品とは一味違って、どちらかと言うと児童文学のような作品です。少年トアンの日記を語り手として、ある日十字路で漆黒の髪をした眼帯の男の子に出会うところから話が始まります。
 おとぎ話のようで、登場人物がみんな個性的。ツァイスやカシス、キイルが、本当に街の中に居そうで思わず現実世界でも探してしまったり、路地裏をじっと見つめてしまったりします。思い出してみれば、子供の頃はよくこの本に書かれているようなことを想像して遊んでいたわけで、この話はそれを具現化してくれているようなものです。読者は少なからずノスタルジーを感じるんじゃないでしょうか。現実でもこの作品の中にしても、こういう経験もきっと子供の頃にしか出来ないんだろうなあと思うとちょっと切ないですね。大人たちは子供の言うことを分かってくれない。こういう子供視点の考え方も今では出来なくなってしまいました。

 批判の一つに展開が読める、との意見をよく聞きますが、山口マオさんの装画も素敵なので、それも合わせて絵本のように話の雰囲気を楽しむのが良いんじゃないかと思います。


(2009.6.23)
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