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星間商事株式会社社史編纂室


「消えることのない愛情の光を、だれかの胸に灯せる人間が、いったいどれぐらいいるだろう。」


 今回はとにかく三浦しをんの趣味爆発、と言った感じ。これまでは陸上・文楽・林業と、今まであまり触れる機会の無かった世界のことを親しみやすい文体でエンターテイメントとして発信してきましたが、今回のテーマはなんと「同人誌」。しかも「創作BL」まで絡んでくるという、恐ろしき腐女子文化への招待です(笑)。そちら側に造詣の深い読者ならまだしも、何も知らない一般の(それこそ男性の)方が読んだら一体どんな反応が返ってくるのか……少々不安でもあり、楽しみでもあります。

 今回の主役は久しぶりに女性。旧友3人で学生時代からずっと創作BL同人誌を作ってきた川田幸代29歳。コミケ(コミックマーケット)にもほとんど毎回参加している。そんな自分の趣味の時間を確保するために、きちんとした時間帯で、きちんと休日にまとまった時間が取れて、仕事がプライベートの邪魔をしない、そんな職場を希望したばかりに飛ばされた「星間商事社史編纂室」。そこでのあまりのユルさに驚きはしたものの、趣味を取って敢えてそこに安住しかけている。そんな中、ふとしたことで課長に幸代の同人活動(サークル:月間企画)がバレてしまう。「君、腐女子というやつだな。」課長の言った一言「同人誌を作ろう!」により、チャラいナンパ男の矢田、可愛い後輩のみっこちゃん、役に立たない課長プラス居るのかどうかも定かでない幽霊部長と共に同人誌を作ることに。並行して社史を編纂する中で見えてくる星間商事の影。かつてあった星間商事の闇の時代とは一体……?
 という感じのお話。アジアの架空小国サリメニを中心に、一見ファンタジーとも思えるストーリーが展開します。幸代が物書きでもあるため、作中でBL小説が展開されるのですが、これがなかなかに濃い。勿論濡れ場は描写されていないものの、本業が作家である三浦しをんが書いているものですから、大変上手い。続きが読みたくなります。松永と野宮の二人(男同士ですよ)の話が一応の完結を見せた時には思わず拍手しそうになりました。課長の創作話も、ストーリーの中核を成すある海賊の「物語」も面白い。このような世界に免疫がある人は良いですが、読者の中には三浦しをんの趣味を知りつつも受け入れられず、あるいは全く知らずに著作を読んでいる人も大勢いると思うので、大衆向けかと問われると素直にハイとは言えない作品ですね。ただ、その物書きである幸代のモノローグは、少なからず著者本人の本音も入り交じっているように見えて何だか真剣に読んでしまいました。物書き三浦しをんはこんなスタンスで執筆活動をしているのか、と勝手に思っているのですが、どうなんでしょう。
 あと、オタクに限らず女性の永遠の問題、恋愛と結婚についてがやけにリアルに語られています。友人はもう結婚して母親にまでなっているのに、私はどうなの? 私はまだオタクで居られるけど、私たちはこれからもずっとこうして居られるの? もし止めるのなら、友情は一体どうなるの? という幸代の煩悶がそのまま悩める女性たちの煩悶ですね。ストーリーが若干妄想爆裂気味(でも面白い)であるために、逆に幸代のプライベートな問題と内面が浮き彫りになっていて興味深いです。作中の登場人物達は皆それぞれに答えを出していますが、羨むべきは幸代にも一応彼氏がいること(笑) そこが現実の多くの腐女子とは違う点です。だからこそ「結婚」の二文字がリアルに突きつけられるわけですが。
 これを読んだらオタク達は勿論のこと、女性であれば誰でもその問題について考えるはず。いつまでもオタクでは居られない、いつまでも子供では居られない。そんなノスタルジアがそこはかとなく漂ってきます。ただ本当に挿入されている幸代のBL小説は本格的BL小説なので、苦手な人にはお勧め出来ません。あらゆる意味で「腐女子向け」の作品でした。

 何度も言いますが、腐女子向けですので、腐女子が読むと大変面白いと思います。


(2009.12.27)
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