<< 太陽の塔 main 娚の一生 2巻 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

- - -
きつねのはなし


「彼はふいに骨張った十指をひらいて、顔を包み込み、大げさに泣き崩れているような格好をした。掌に覆われた顔が暗くなり、指の隙間から眼球がのぞいていた。」


 初期の比較をしてみようと『太陽の塔』から続けて読みました。装丁と雰囲気から怪談モノだとは思いつついつもの森見節を期待して読んだら、全く違う。あの良い感じに気持ち悪い言葉遣いが全くと言っていいほど無いのです。
 狐の面を巡る不思議な男の話を描いた表題作『きつねのはなし』、夢のような話を語る先輩との交流を描いた『果実の中の龍』、人の心を惑わせる何者かを描いた『魔』、夢か現か分からない中に幼い頃の記憶を見る『水神』。京都を舞台に展開する妖の類いを描いた全四作の短編からなるこの作品、全編通して読んでもいっそ面白いほどすっきりしません。所々キーワードやキーセンテンスは一致するものの、何かがズレている。一話一話がリンクしているようでしていない、でもやはりどこかで繋がっている気がする。だとしたら、あの「魔」は一体何なのか(と言うほど、一番分からなかった話が『魔』でした)。読んでも読んでも、読後のモヤモヤは増すばかりです。そのモヤモヤを好意的に捉えるか鬱陶しいと捉えるかは読者次第ですが、私は半々でした。京都の闇の部分に足を踏み入れたような、一度嵌まると抜け出せないような中毒性があるように思います。繰り返し読むうちに何か一本の筋が見えてくる……ような気がします。蛇足ですがやっぱり表題作が一番面白い。あの一編を軸に考えるのが一番分かりやすいのではないでしょうか。それこそ、『果実の中の龍』にあった「本当でも嘘でも、かまわない。そんなことはどうでもいいことだ」の一言に集約されています。

 異質ではあるものの、森見登美彦の可能性の大きさを思い知らされた作品でした。またこのような作品が出ることを期待しています。


(2009.11.26)
book comments(0) trackbacks(0)
スポンサーサイト

- - -
comment
comment









この記事のトラックバックURL
http://hepta7.jugem.jp/trackback/46
trackback

Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2019 >>

Categories
Selected Entries
Archives
Recent Comment
Profile
TweetsWind
Mobile
qrcode
Sponsored Links