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ゾロ ザ・ミュージカル


「人間は、有りのままの人を愛せるのか」


 ミュージカルに興味はあっても、今までの人生で一度も生舞台を観たことがなかった私。スペインバレエの舞台(ボレロ)を幼い頃に一度観に行ったぐらいで、まず劇場というものに足を踏み入れたことがなかったのです。そんな私が即決で12000円出してA席を買い、パンフレットにもお金を惜しまず、嬉々として出掛けて行ったのは他でもない、V6の坂本昌行が主演だったからです。

 怪傑ゾロ、といえば1998年のアントニオ・バンデラス主演映画『マスク・オブ・ゾロ』(マーティン・キャンベル)が記憶に新しいですが、かつてはあの名優アラン・ドロンも『アラン・ドロンのゾロ』(1975、ドゥッチオ・テッサリ)でゾロを演じていました。その後何度もテレビシリーズ化されるなど、その人気は誕生以来衰えることを知りません。
 さて、そのゾロ、どれだけの好人物でヒーローめいたナイスガイかと思ったら、仮面を外した途端にどっこい、ただのチャラ男な放蕩息子なのです。人並みに気遣いが出来て、人並み以上に剣術が出来て、人並みに情けない。別に完璧でもなんでもない、ただの正義に燃える男、それがゾロなのです。等身大なヒーローだからこそ、観客はゾロに親近感を抱き、愛おしくさえ思う。ずる賢くてちょっとドジ、そんな憎めないキツネ(ゾロ)。だからこそ彼は永遠にエンターテイメントの題材たり得るのでしょう。
 今回のミュージカル化にしても、スペイン演劇によく見られる愛、名誉、決闘、大団円の要素をふんだんに、満遍なく盛り込んだストーリーは特に目新しいものではありません。『セビリアの理髪師』然り、『人生は夢』然り、変装した相手にそれと知らずに惚れる、というのは既に古典演劇で使い古されたネタです。それでも予想以上に面白かった! それというのもきっと、脚本と音楽、そしてダンスが素晴らしいものだったからでしょう。

 今回、私の席は一階席前から8列目の右から二つ目という、運が良いのか悪いのか、キャストには近いけれども舞台の右端が柱に隠れて見えないという微妙に残念な席でした。ただ、スタンバイのキャストやスタッフさんの様子が正面からよりちょっとだけ長く観られたのは良かったかなあと思います。
 とにかくディエゴ/ゾロ(坂本昌行)目当ての私は、ディエゴの登場を今か今かと待ち望んでいて、開演前にパンフレットを眺めているだけで涙が出てくるほど興奮していました。何か熱気に包まれたものを観ると何故か涙が出やすくなる私ですが、今回ばかりは脳内アドレナリンが半端じゃなかった。そして幕が上がった瞬間に涙が止まらない止まらない。周りの人は誰も泣いてなどいないのに、一人だけ号泣。ハンカチを持って行き忘れたのでひたすら服の袖(吸水率悪し)で拭ってました。イントロはジプシーたちの口上。そしてダンスステージに来て、華々しくディエゴが登場します。ここで感極まった私はもう涙で視界が滲んで、拭うのも止めてただ流れるに任せていました(笑) そして坂本くんの歌の上手さ……! 流石ジャニーズで一番と称される歌声、歌唱力、声の美しさ。普通の演技と違う話し方が要求される舞台では、普段と様子が全く変わってしまうことが常。でも坂本くんはいつもと変わらずかっこいい。それに加え、オカマくさく可愛らしい坂本くん、ルイサにたじたじな情けない坂本くん、殺陣の時の立ち回りが全く年齢を感じさせない坂本くん……もうお腹いっぱいです。ダンス、フラメンコも付け焼き刃とは思えない、しっかりしたレッスンをベースにしたものだと匂わせる出来でした。小道具・大道具を上手く使った振り付け、演出には舌を巻くしかありません。
 イネス(島田歌穂)も妖しく美しく、ジプシーの女として確固たる意思を持って生きていることが伝わって来ます。女性陣の歌がまた素晴らしく、特にルイサ(大塚ちひろ)の歌唱力は時にディエゴの声をかき消してしまうほどの迫力(笑) ネイティブのスペイン人キャスト、日本人キャストが入り乱れて演じられるこの作品では、彼女たちが何度も歌い、踊ります。その全てにパワーに溢れ、迫力がある。ダンスシーンになる度に崩壊していた私の涙腺ですが、ラモン(石井一孝)の苛政に喘ぐ村人の歌、『どうか自由を!』のところでダム大決壊。このダンスがまた良いのです。フラメンコである以上、床を強く叩く振り付けが多々出てきますが、その全てが違う感情を表しています。全員の息の合ったタップは圧巻。『バイラ・メ』『ジョビ・ジョバ』あたりは彼らの見せ場。見所がありすぎて、正直舞台全体を掴みきれませんでした。ただしスペイン人ダンサーはかなり自由で自己表現が強めなので、きっとイレギュラーな行動もたくさんあるんだろうなあ。これは演出のクリストファー・レンショウもインタビューで触れています。このアドリブ気味の雰囲気が作品を良い変化に導くんでしょうね。特に各ジプシーたちに見せ場が与えられる酒場・広場でのダンスシーンは楽しんで踊っているでいるであろう雰囲気が伝わって来ます。歌もダンスも文句なし。

 脚本に関しては、とにかくシリアスとコメディのさじ加減が上手い。観客を何度もどっと沸かせたと思ったら、次の瞬間にはラモンの登場と思わぬ展開。ガルシア軍曹(我善導)がかなり場を和ませる役どころ。そんな彼にもしっかり見せ場が用意されていて、素晴らしい。曲の入れ処、使われ方も秀逸。また、アクションシーンがセットを存分に生かされたもので迫力があります。ロープアクションなんかは凄い。何が凄いって高所恐怖症のはずの坂本くんが何ともないかのようにするすると降りてくるところが凄い(笑)
 殺陣にしてもミュージカル仕様とは言え臨場感とビジュアル的なイメージがシャープで手に汗握ります。多分これは坂本くんのスタイルの良さ(足の長さ)がモノを言うのではないかと(スタントさんがいますが)。スペイン人キャストにもひけを取らない足の長さ。ゾロの衣装がよくお似合いです。マントのひるがえり方、ドレスのドレープのラインも見せ方が上手く、衣装のトム・パイパー、桜井麗のこだわりが見て取れます。
 また、カーテンコール時、キャスト全員が入り交じってパ・ド・ドゥを踊ったりするんですが、この組み合わせがまた自由で、ラモンとジプシー(ソニア・ドラド)とか、ルイサとジプシー(フェルナンド・ソラノ)とか。このスペイン人ダンサーふたりはかなりの実力者、有名処らしく、けっこうソロの時間が設けてあって、個人的には大満足です。ギター役のアントニオ・カラスコの存在感も見逃せませんね。ジプシーたちのシーンは彼の歌声とふたりのフラメンコで本場の空気を見事に作り上げています。
 ちなみに、一番印象的なシーンは、イネスの姿を見て老ジプシー(上條恒彦)が叫び声を上げるシーン。そこからのジプシーたちの嘆きがリアルに伝わってくる、非常に印象深く良いシーンでした。


 とにかくほとんどの場面に涙した舞台でした。カーテンコールに至っては坂本くんの肉声を聞けただけで半狂乱になってました。「是非大阪の最終日も来て下さいね! これは僕と皆さんとのヤ・ク・ソ・ク、ですよ!」なんて言って小指を唇に当てた時の劇場の盛り上がり様と言ったらもう! そして彼の口から東日本大震災義援金の話が出て、「募金したよー!」などと返事をしたお客さんにお礼を言ったりなど、交流を大事にしているところ、また、被災された方々への心遣いに胸が温かくなりました。実際その呼びかけの後、帰り際のお客さんはみんな募金して行ってました。大きな災害が起きてからも無事に上演出来たことに感謝しつつ、被災された方々のご冥福をお祈りします。

 ロンドンオリジナルキャストを始め、パリ、モスクワ公演、日本の次にはニューヨーク公演と世界的に有名なこの作品を、2月に東京で、そして3月に名古屋で上演することを決めてくれた東宝の人々に大感謝です。正直大阪の最終公演も観に行きたい。近くのお客さんの中には、もう5回目なんです、という人もいて、いかにこの作品の完成度が高いかが分かりました。そしてその方はもう大阪の千秋楽を予約されたそうだ……羨ましい。
 CDとDVDがもうあるものと思って売店に買いに走りましたが、残念ながらまだ出ていない様子。というか、この作品は基本的にWキャストで上演している上に日本原作ではないので、正直CDとかDVDは出るかどうか大変不安です。出るにしてもいつ、どこで手に入れられるんだろう。オリジナル版からは追加ナンバーもあるみたいなので、すごく気になります。何万でも出すのに!  あまりに悲しくなったので、売店で売っていたロンドンオリジナルキャスト版のサントラを買ってきました。こちらもなかなか良いです。オリジナルなので良いのは当たり前なんですけども、声と雰囲気がそっくり。日本版キャスティングにかなり気を遣ったんだということが分かります。CDを聞いているだけで舞台の情景と感動が甦ります。これだけ先に買っておいて、音を楽しむのもアリかもしれないですね。


 とにかく早くDVD出てほしい! 切実に! 東宝さん頼んだ!  今日のことは多分一生忘れないと思います。パンフレットもロンドン版CDも、きっと一生大切にするでしょう。それだけ私にとって特別な舞台でした。ありがとう!


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